長時間の座りっぱなしが高齢者の認知症リスクを増加させる?

世界保健機関(WHO)によると、日常的な長時間の座りっぱなしは、高血圧、脳卒中、心疾患、糖尿病など、様々な病態を引き起こすと警告しています。

これらの病態のみならず、最近のコホート研究では高齢者の長時間の座りっぱなしが認知症の発症リスクを増加させる可能性が明らかになってきました。

この記事では、長時間の座りっぱなしが高齢者の認知症につながる理由などについて解説します。

座りっぱなしが高齢者になるほ認知症になりやすい

高齢者の座りっぱなしの傾向を調査する指標として、テレビの視聴時間がよく使われています。

2015年にNHK放送文化研究所が行った調査では、平日・週末関係なく、高齢者の1日のテレビ視聴時間は平均で5時間以上であることが示されています。

日本にはテレビを視聴する文化が根付いており、定年後の主要な娯楽としてテレビを見る人が多いのが一因と考えられます。

また、一般的に年齢を重ねることで筋力が低下し、長時間立ったり歩いたりすることが困難になるケースが増えます。

関節の痛みや骨密度の低下など、老化に伴う身体的な変化が日常生活の動きを制限することがあるとされています。

高齢者は身体的に疲れやすく、休息やリラックスする時間が増えるため、長時間座りっぱなしになりやすいと言われています。

出典:Prevalence of Sedentary Behavior in Older Adults: A Systematic Review

出典:高齢者の座位行動研究の動向と展望:座りすぎの実態とその健康リスク

高齢者の座りっぱなしと認知症の関係

2023年の9月に学術誌JAMAに掲載された研究によれば、座りっぱなしの状態と認知症との関連性が報告されました。

この結果から、高齢者が長時間座る行動が多いと、全原因認知症の発症リスクが高まることが明らかとなりました。

研究者たちはUKバイオバンクからのデータを利用し、加速度計を身につけた状態で認知症の診断を受けていなかった60歳以上の49,841人のデータを分析しました。

参加者は、2013年2月から2015年12月の間に加速度計を身につけ始めました。この研究は、イギリスでは2021年9月、スコットランドでは2021年7月、ウェールズでは2018年2月まで実施されました。

加速度計のデータ解析から、高齢者が1日に平均10時間座りっぱなしの日数が多いと、全原因認知症のリスクが高まることが示されました。

出典:Sedentary Behavior and Incident Dementia Among Older Adults

座りっぱなしが認知症のリスクを増加する理由

長時間の座りっぱなしが認知症のリスクを上げる主な理由は、他の病気を介して発症する可能性があると考えられています。

WHOは、長時間の座りっぱなしが、高血圧、心疾患、糖尿病、精神病などの慢性疾患を引き起こすと注意喚起を行っています。

長時間の座りっぱなしの生活は、これらの慢性疾患のリスクを増加させ、結果として認知症にもつながるとされています。

例えば、座りっぱなしによる運動不足は血液循環の低下を引き起こし、高血圧のリスクを増大させると言われています。高血圧は、さらに認知症のリスクを上げる可能性があります。

また、座りっぱなしの時間が長くなるほど、筋肉のインスリン感受性を低下させ、血糖値を正常範囲に下げることを困難にするとされています。

その結果、糖尿病になってしまうと、認知症を発症するリスクも増加すると考えられています。

認知症と他の病気の関係性についての詳細は以下の記事をご覧ください。

心筋梗塞になると認知機能が低下し、認知症を発症するリスクが高くなる?

糖尿病と認知症:関連性と予防法

出典:Physical inactivity a leading cause of disease and disability, warns WHO

高齢者でも簡単に座りっぱなしを解消する方法

特に座りっぱなしの時間が長い高齢者は、筋トレやジョギングなどの高度な運動は、強制しない限り、習慣づけるのは難しいのではないでしょうか。

その中で、運動をしない高齢者でも日常生活に取り入れやすい座りっぱなしの解消方法をいくつか解説します。

定期的に立ち上がることを意識する

自分自身に合ったルールを設定し、定期的に立ち上がることを意識してみてください。

例えば、30分に1回立ち上がることだったり、テレビは立ちながら視聴することなど、負担が少ない方法で座りっぱなしを改善することができます。

座りながら運動・ストレッチをする

座っている最中でも、足を上げたり、手を伸ばしたりして、軽い筋トレをすることができます。

また、足首を回す、膝を曲げ伸ばしするなどのストレッチで、関節を動かし、身体の血流を良くすることができます。

積極的に家事をする

掃除、洗濯、食事の支度など、家事をこなすことは座りっぱなしの解消になります。家事を積極的に行うことで、清潔で健康的な生活ができるだけではなく、日常的に運動量を増やすことも可能です。

リモコンや飲み物などを離れた場所に置く

リモコンや飲み物などを離れた場所に置くことで、あえて動かざるを得ない環境をつくることができます。

テレビのチャンネルを変えたいときや、音量を調整したいときに立ち上がって移動したり、喉が渇いたときに台所に行って飲み物を取りに行ったりすることで座りっぱなしの状態を改善してみましょう。

外出する

短い散歩でも良いので、日常的に外出することで、体を動かす機会を増やしましょう。

最寄りの公園や商店街を散策するだけでも、適度な運動となります。また、通販ではなく店頭で買い物をすること等もおすすめします。 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせられる可能性のある病気とされています。

そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。

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MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

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