認知症初期症状は歩き方でわかる?認知症の歩き方特徴5つを解説

 

認知症は、高齢者が発症しやすい身近な疾患です。

 

根本的な治療法は確立されていないため、一度発症すると症状が徐々に悪化すると言われています。

 

認知症の予防を実施するには、認知症の知識を深め、対策を積極的に取ることが非常に重要です。

 

この記事では、あまり知られていない認知症の症状、「歩き方の変化」について詳しく解説します。

 

 

認知症とは

認知症は、記憶力、思考力、判断力などの認知機能が低下し、日常生活に悪影響を及ぼす一連の症状を指します。

 

認知症は主に、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の「四大認知症」に分類されています。

 

その他に、アルコール性認知症や混合型認知症などの種類もあります。

 

認知症を発症する原因はまだ解明されていません。現時点では以下のような原因が主に考えられています。

 

認知症の原因:

高齢

・高血圧

・心疾患

・脳疾患

・社会的孤立

・うつ病

・外傷性脳損傷

 

認知症の症状は中核症状周辺症状の二つに分類されています。

 

中核症状は、初期に見られる認知機能低下の症状を意味するのに対し、周辺症状は進行するにつれて現れる行動・心理的な症状といわれています。

 

中核症状:

・記憶障害

・言語障害

・失言

・実行機能の障害

・空間認識障害

・注意・集中力の低下

 

周辺症状:

・情緒の変動

・幻覚・妄想

・不安や抑うつ

・睡眠障害

 

認知症と歩き方の関係

高齢になると筋力が低下し、身体を動かすことが難しくなることが一般的です。

 

高齢者は認知症を発症しやすく、その進行と共に歩行に関する問題も発生すると言われています。

 

2015年に米国国立医学図書館が公表した研究では、軽度認知障害(MCI)、または認知症を持つグループで歩き方の悪化が見られたのに対し、健康なグループでは通常の歩行が確認されました。

 

また、2023年10月に公開されたロンドン大学カレッジ(UCL)の研究では、アルツハイマー型認知症の初期段階にある人々は、歩行困難を示す傾向があることが示唆されています。

 

アルツハイマー型認知症のバイオマーカーを持つ軽度の認知障害を持つグループは、方向感覚の変動が一貫して増加していることが明らかにされました。

 

一方、健康な高齢者やアルツハイマー型認知症のバイオマーカーを持たない軽度の認知障害のグループでは、そのような歩行困難は確認されなかったようです。

 

これらの研究結果から、高齢者の歩行困難は健康的な老化や一般的な認知の衰えよりも、認知症特有のものである可能性が高いことが示されています。

 

出典:Gait and dementia

出典:Functional mobility in a divided attention task in older adults with cognitive impairment

出典:Overestimation in angular path integration precedes Alzheimer’s dementia

 

認知症の歩き方の特徴5つ

認知症は、5つの歩き方の特徴で健康的な歩き方と区別できると考えられています。

 

特徴① すり足

足を高く上げることが難しくなり、地面をすりながら歩くことが増えるとされています。

 

これは、認知症によるバランス感覚の喪失や運動能力の低下による可能性があるとされています。

 

特徴② そわそわしていて落ち着きがない

認知症の方は行動・心理症状の一つとして不安や混乱を感じることが多いとされています。

 

そのため、落ち着きを失い、常に歩き回ることがあると考えられています。

 

特徴③ 歩幅が狭い

歩幅が狭くなり、小刻みな歩き方をすることが認知症患者の歩き方の特徴とされています。

 

国立環境研究所によると、歩幅が狭い人は歩幅が広い人よりも認知機能が低下するリスクが3.39倍あることが示されています。

 

出典:Nutritional biomarkers and subsequent cognitive decline among community-dwelling older Japanese: a prospective study

 

特徴④ 夜中に歩き回る

認知症の患者は、夜中に家の中を歩き回ることがよくあるとされています。

 

これは、認知症の中核症状に該当する見当識障害、つまり時間や場所の認識が低下することによるものと言われています。

 

そのため、夜中に昼間の行動をとることが多いと考えられています。

 

特徴⑤ 左右非対称

認知症になると歩行が左右非対称になることがあるとされています。

 

歩行が左右非対称とは、歩幅や歩行速度などが左右の足で異なることを指すと言われています。

 

2019年に発表されたイギリスの研究によると、レビー小体型認知症の患者は歩き方が左右非対称の傾向があるため、転倒しやすいと報告されています。

 

出典:Do Alzheimer’s and Lewy body disease have discrete pathological signatures of gait?

 


 

これらが認知症患者の歩行に関する特徴とされているものの、自分自身では判断せず歩き方の変化が気になる場合は、速やかに医療機関にご相談することをおすすめします。

 

認知症になると歩き方が変化する原因

脳のヒポカンパス領域へのの損傷

ヒポカンパス(海馬)は脳の中で記憶や空間認識に関与する部分とされています。

 

認知症の進行に伴い、このヒポカンパスが損傷を受けると、歩行時の方向感覚や距離の認識とともに、歩き方も乱れるとされています。

 

運動能力の低下

認知症の進行により脳の萎縮がしていくと、運動能力が低下する可能性もあると考えられています。

 

これにより、歩行時に足を引きずる、バランスを崩しやすくなる、歩幅が狭くなるなどの変化が見られるようになるとされています。

 

運動能力の低下は、特に階段の昇降や坂道の歩行が難しくなることが多いようです。

 

実行機能の低下

実行機能とは、計画を立てたり、物事を順序立てて行動に移す能力のことを指します。

 

認知症の患者はこの実行機能の低下により、日常の動作や歩行にも影響が出ることがあります。

 

例えば、歩き始める前に立ち止まってしまったり、途中で方向を変えることが難しくなったりします。

 

また、複数の動作を組み合わせた動作、例えば歩きながら物を持つことが困難になることもあります。

 

歩き方の変化を早期に認識し、適切なサポートや治療を受けることで、認知症の予防・改善を期待できると考えられています。

 

認知症を予防するには

認知症を予防するには、複数の対策を継続的にとることが効果的とされています。

 

具体的に以下のような認知症の予防法が推奨されています。

 

・定期的に運動する

・禁煙する

・バランスのとれた食事をする

・アルコールを控える

・社会活動(参加)をする

・体重、高血圧、糖尿病、難聴、脂質異常症を管理する

・うつ病を改善する

 

出典:WHO ガイドライン『認知機能低下および認知症のリスク低減』

 

周囲にいる高齢者・認知症患者の歩行をサポートする方法

周囲の高齢者や親族の歩き方に変化がみられる場合は、認知症が潜んでいる可能性があります。

 

高齢者で歩行困難がみられる場合は医療機関に相談し、以下のサポート方法を実践してみてください。

 

安全な歩行環境を整える

認知症患者は、物の場所を忘れたり、足元が見えにくくなったりすることがあります。

 

家の中を整理整頓し、障害物を取り除くことが重要です。

 

例えば、滑りやすい床には滑り止めやカーペットを使ったり、床の置物を少なくすることがおすすめです。

 

歩行補助具を使用する

歩行補助具は、歩行の安定性を高めるのに役立ちます。歩行器や杖、クラッチなどの種類があります。

 

適切な補助具を選ぶことで、転倒のリスクを低減させることが可能です。

 

歩行時のサポートやアドバイスをする

歩行時には、患者の横や前を歩き、必要に応じて手を引いたり、指示を出したりしてサポートすることができます。

 

また、歩くスピードや歩幅などを注意深く観察し、適切なアドバイスをしましょう。

 

定期的な運動やリハビリを勧める

筋力や柔軟性を維持・向上させるためには、定期的な運動やリハビリが必要です。

 

簡単なストレッチや歩行トレーニングを日常の生活の中で取り入れることで、歩行の安定性や持続性を高め、認知症予防も期待できます。

 

認知症は早期発見と定期的なセルフチェックが重要

認知症は、早期に発見して適切な介入・治療を施すことで、その進行を遅らせられる可能性のある病気とされています。

 

そして、早期発見には定期的に自身の認知機能の状態変化を把握することが重要になります。

 

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MCI段階で発見すれば進行を抑制できる

認知症の一歩前の段階にMCI(軽度認知障害)という状態があります。

物忘れなど認知症に見られる症状が出ているものの、その程度は軽く周囲に影響を及ぼすほどではない状態です。

 

しかし、軽度とはいえMCIを放置すると、その中の約1割の方は1年以内に認知症を発症すると言われています。一方で、もしMCI段階で適切な治療を施すことができれば、健常な認知機能まで回復する可能性が14〜44%もあるとされています。

 

つまり、認知症を深刻化させないためには、少しの認知機能の変化に気づき、適切に対応することが有用であると考えられます。

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