尾張旭市健康福祉部健康課 玉川様(左)・川原様(右)
尾張旭市健康課では、市民の健康づくりの一環として、脳の健康チェックテスト『あたまの元気まる』を実施しています。同課では、市民が自身の認知機能の状態を知る機会を広げるために、保健福祉センターでの実施に加えて、イベントや出張測定を積極的に行い、多くの市民が手軽に検査を受けられるよう努めています。
令和6年4月から、従来の対面式検査に代わって、新しく『認知機能セルフチェッカー』の導入を決定しました。
------- 尾張旭市健康課では、『認知機能セルフチェッカー』を導入する前に約10年ほど対面式の認知機能検査を実施していました。しかし、対面式検査は緊張感を伴うため、検査を受けることに抵抗を感じる方が多く、受検率が低迷していました。また、1回の検査に約15分を要し、できるだけ多くの市民に検査を受けてもらうにはかなり時間がかかっていました。そこで、より簡単で負担の少ない新しい検査方法の導入を検討することになりました。
-------- 新しい検査方法として『認知機能セルフチェッカー』とタブレット式検査の二つを比較検討しました。両検査とも従来の対面式検査に比べて利用者にとって緊張しないという利点がありましたが、『認知機能セルフチェッカー』の方が、より短い時間で検査ができ、検査内容も充実していることが大きな決め手となりました。実際に、過去に対面式検査を受けた経験がある市民からも『認知機能セルフチェッカー』を体験した際に「面白い」と評価する声が多く聞かれました。利便性の高さや市民からの高い評価を受け、最終的に『認知機能セルフチェッカー』を導入することに決定しました。
-------- 尾張旭市では、『認知機能セルフチェッカー』を活用し、認知機能の維持・向上を目的とした『あたまの元気まる』という脳の健康チェックテストを実施しています。
『あたまの元気まる』では、市内在住で要介護・要支援認定を受けていない40歳以上の方を対象に、じっくりと認知症予防の理解を深める「みっちりコース」と検査・結果説明のみの「サクッとコース」を設けています。
各コースでは保健師1〜2名が対応し、「みっちりコース」では検査後に脳トレや認知症予防に関する講話を実施しています。
また、眼疾患などの理由で検査を受けることができない方には、国立長寿医療研究センターと愛知県が開発した紙媒体のコグニチェックリストを活用して検査を実施しています。
保健福祉センターで行う教室では、約1年間で100名程の市民に参加いただくことができ、特に70代以上の方に多く受検していただいています。
検査後のフォローアップとして、検査結果が思わしくなかった方には保健師から点数の説明を行い、生活習慣の改善によって認知機能の低下を予防できることを伝えています。
さらに、MCI(軽度認知障害)の予防方法に関するパンフレットを配布し、タイミングが合えば他課や社会福祉協議会の認知症予防教室への案内や食生活の改善が必要な場合は管理栄養士へつなぐといった支援を行っています。医療機関への直接的な紹介は行っていませんが、状況により専門医への受診を推奨したり、かかりつけ医への相談を勧めたりするなど、適切な対応を取っています。
教室以外にも、地域の薬局やスーパーでの出張、健康イベントでの活用等により、さらに1年間で約400名の方に『あたまの元気まる』を受けていただくことができました。
-------- 『認知機能セルフチェッカー』の導入による一番の効果は、受検者が大幅に増加したことです。従来の対面式検査では年間約150名しか検査を受けられなかったのに対し、『認知機能セルフチェッカー』では、検査時間が短いため、年間500名以上が検査を受けることができました。
また、対面式検査と比べて心理的負担が軽減され、緊張せずに受検できることから、市民の満足度も向上しました。実際に、検査を受けた方からは、「面白かった」「手軽で楽しい」といった感想を多くいただき、これまで検査をためらっていた方も気軽に検査を受けられるようになりました。
さらに、検査の運営も効率化されました。保健師1〜2名の対応でスムーズに実施できるため、限られた人員でも効率的に検査を実施することが可能となりました。
これにより、より多くの市民にご自身の認知機能の状態を把握していただくことができ、認知症予防の大切さを伝える機会を増やすことができました。
今後の展望としては、『あたまの元気まる』を継続しつつ、地域への出張を増やしていくことで、さらに多くの市民に検査の機会を提供し、若い年代からの認知症予防対策を促進していきたいと考えています。
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